8月17日、18日に開催されたタグボート主宰のアートイベント「Independent Tokyo」が終わった。
総勢150名を超えるアーティストが出展するイベントは過去最最多の来場者があり、土曜の夜に出展者の交流会が居酒屋で行われたのだが、ここでも130名のアーティストが集まって大盛り上がりとなった。
アーティスト達はその交流会で制作の苦労とかアーティスト活動をどのようにしてるか等、アーティスト同士で語り合う機会があったことが想像される。
アーティストはそれぞれが悩みを持ちながら、孤独の中で戦っていることが多い。
それはアーティストが何を作るかを誰かに相談しているわけではなく、作りたいものを創造しているからこそ孤独なのだ。
しかし、単なる趣味であればよいのだが、アートを職業として安定的にやっていきたいとなれば話は別だ。
ほとんどのアーティストが作品販売だけで食べていくのが難しいため、同じような悩みを抱えながら戦っているのだ。
副業しているアーティストが職場の人に相談しても何ら解決するわけでもなく、「そんなことより今の仕事に集中しろ」と言われるのがオチだろう。
アーティストは個人事業主であるため、何をしてもよい自由を持っている一方、作品を販売することで生活の糧を得なければならないので安定のない厳しい仕事なのだ。
そのためにはサラリーマン社会を生き抜くための処世術とは全く違う思考が必要であり、アーティストが学ぶべきことは山ほどある。
特にサラリーマンとして働きながら安定収入があった人にとって、仕事をやめてアート販売だけで食べていくた方法をつかむのはハードルが高いだろう。
アーティストは月次で決まったお金をもらえるものではなく、さらに作品を作っても売れなければコストだけがかかってしまうからだ。
売れてなんぼの世界であり、売れない作品を作り続けることは時間の浪費と取られてもしょうがない。
つまりニーズのある作品しか売れないのであり、世の中が必要としているかどうかを意識して作品を作らなければ売れることはない。
しかしながら、ニーズを意識すれば自分が本当に作りたいものが作れないと言うアーティストがいる。
そういうアーティストを我々はアマチュアと呼ぶ。
あえて厳しい言い方になるが、好きなものだけ作って食べていけることはありえない。
「アートの売り上げとは何か」を一言でいうと、以下の図の通り作家が「作りたいもの」と、世の中の「ニーズ」が交じり合う部分と言えよう。
この交わる部分でしか作品は売れないのだ。
売れないアーティストというのは、上記の図の水色の部分ばかり作っているのであり、黄色い部分の世の中のニーズと交わっていないのだ。
とは言いながら、アーティストは世の中にニーズがあるからといって、自分の作りたくないものを作ってはいけない。
やりたくないことを続けるとモチベーションも下がるし、制作する気持ちが疲弊してしまうからだ。
アーティストが継続して売れるようになるには、この図の重なる部分をどのように増やすかが絶対に必要となる。
作りたいものはあるけど、どうしても世の中のニーズと合わないと嘆くアーティストも出てくるだろう。
解決する方法としては、世の中のニーズを広範囲で捉えることと、自分が作りたい作品の幅を広げて考えることだ。
作りたいものだけを作って、いつか誰かが認めてくれると考えるのは前近代的な思想であり、今のこの情報化社会において、2,3年で才能が開花されなければその後も認められることはないだろう。
ゴッホの時代と違って、出る杭はすぐに見つかる時代となっているということを我々は気付かなければならない。
とは言いながら、アーティストは日々制作に追われていると、世の中がどのようなものを欲しているか(ここが一番難しいのだが)を正しく把握するアンテナと、自分自身が本当は何をしたいのかを問い直す時間がないのが事実だ。
これについての解決策については、次のコラム「アーティストのキャリア - その7 -」の中で詳しく述べていくことにしたいと思う。